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  • 執筆者の写真ブレイブハートNAGOYA

0009 救命講習用マネキンなどの衛生管理

清潔な環境で暮らしたい、清潔な物を使用したい。それは誰しもが持つ願いでしょう。

健康に関する内容を取り扱う救命処置・ファーストエイド講習において、受講者の健康を害するようなことがあってはならず、受講者が触れ、そして呼気を吹き込むこととなるマネキンなどの衛生管理は、とても重要なことです。



マネキンの肺は使い捨てである


救助者が呼気を吹き込む形の人工呼吸の練習を行うと、マネキンの気道や肺には受講者の呼気が入ることとなります。


何度も人工呼吸を行ったポケットマスクは、呼気で内側が曇っており、それだけ呼気には水分が含まれているということがわかります。


呼気が入るマネキンの肺も、同じように内側が曇っています。

肺の内側は乾燥させることができる箇所ではないので、この水分はしばらくの間そのまま残ってしまいます。



肺を交換せずにずっと使い続ければ、このように肺の中にカビ等が発生します。(※私どもの講習で実際に使用しているマネキンの写真ではありません)


そのため、救命講習でよく使用されるリトルアンやJAMYといったマネキンはいずれも肺が交換可能となっており、講習毎に肺を交換するようメーカーは指定しています。

リトルアンであれば、肺は1枚800円程度。

講習の費用の中には、このような部品の交換費用も含まれているのです。

しかし、予算がないといった理由から、マネキンの肺を交換せずに長期間使用している講習機関も少なくないのが現状です…。


もちろん私どもの講習で使用するマネキンの肺は、人工呼吸を伴う講習が終わった際には必ず交換しています。

必要に応じて講習の中でも肺を交換する機会があるのですが、それを見た受講者様(応急手当普及員資格者の方)が、「普及員講習でこういうことを教えてくれればいいのに…」と仰っていました。



資機材の洗浄・消毒


講習で使用したマネキンのフェイスや貸出用ポケットマスクは、洗剤と流水で洗浄した後、浸漬消毒します。

アメリカ心臓協会AHAのインストラクターマニュアルには、その要領を次のように記載しています。(抜粋)


▼トレーニング中に感染の可能性のある体液に接触したマネキンのパーツは、各クラス終了後直ちに清掃し、汚染物質がマネキンの表面で乾燥してしまうのを防止する。


▼すべての表面、再利用可能な保護フェイスシールド、およびポケットマスクを、暖かい石鹸水とブラシで徹底的に洗う。


▼すべての表面を、500ppm以上の遊離塩素を含む次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分間浸す。


▼すべての表面をきれいな水で洗い流し、自然乾燥させてから保管する。



マネキンをアルコール綿で拭いてそのまま収納するケースも散見されますが、マネキンに付着したタンパク質にアルコールが触れると、化学反応でタンパク質が固着してしまいます。

「除染」と「消毒」は別物。まずは洗剤(界面活性剤)を使用して汚れを落とし、そのうえで消毒です。


参考:【高校化学】高分子化合物30 タンパク質の性質(YouTube)


これは付着した血液の清掃の際にも言えることで、いきなりアルコール消毒剤を使用して拭き取ろうとすると、血液が固着してしまいます。

そのため、「吸着素材で拭き取る⇒界面活性剤で洗浄する⇒消毒する」という手順が必要。これはハートセイバー血液媒介病原体コースの中で学ぶことができます。


参考:米国発の労働安全衛生講習・ハートセイバー血液媒介病原体コース(ブレイブハートNAGOYAブログ)


感染症拡大を受けてか、リトルアン等のマネキンのメーカーであるレールダルのウェブサイトでは、マネキンの洗浄管理法がトップページからアクセスできるようになっています。


レールダル社ウェブサイト「CPRマネキンの衛生およびクリーニング」 https://www.laerdal.com/jp/support/helpdesk-web/hygiene-and-cleaning-procedures-for-cpr-manikins/



感染症拡大に伴う講習運営上の措置

先日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う講習運営上の追加事項がAHAから発表されました。


▼全ての受講者は、コースの前後及び軽食や食事休憩の前後に、少なくとも20秒間石鹸と水での手洗いを行うほか、良好な衛生状態を維持する。


▼人工呼吸の練習は、フェイスシールドは使用しない。一方向弁付きポケットマスクを使用する。


▼練習を行うたび、アルコール剤でマネキンを消毒する。


▼救助者が2人の場合はバッグマスクを使用し、練習ごとにアルコール剤で消毒する。また、受講者は手袋を着用する。


▼可能であれば、練習中はマネキンを少なくとも3フィート(1メートル)離す。


といった内容が記載されており、今後のAHA講習ではこれらが実践されることとなります。


日本では人工呼吸時の感染防止デバイスとして普及しているフェイスシールドですが、前々から感染防止効果は低いと言われていました。今回も感染症対策として使用を禁止しているわけですから、「フェイスシールドに感染防止効果は無い」ということ。雑貨であるフェイスシールドではなく、医療機器承認を受けたポケットマスクを実事案でも使用したいところです。


受講者の目に触れない部分のこだわり


マネキンの肺を交換しているかどうかは、正直なところ受講者にはわからないもの。

AHA講習では規定があるからそれに従う…というだけではなく、受講者の身の安全を守るために、目に見えない部分の衛生管理もすべての救命法講習で確実に行われるべきです。


救助者の身の安全が確保されない限り救助に着手してはならない。そう指導する救命法講習の中で、受講者の安全を脅かすものがあってはならないはずです。


救命法講習の受講先を選ぶ際には、内容や指導力はもちろん、このような衛生管理をどのように行っているかもひとつの検討材料としてはいかがでしょうか。

料金が安い講習が良い講習…では決してないはずです。

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