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0010 反応がある傷病者の対応とファーストエイド教育のあり方

心停止ではない病気やけがの手当=ファーストエイドとして多くの人が思い浮かべるのが、このようなものではないでしょうか。



ファーストエイドに関する一般的な講習(上級救命講習など)や地域の防災訓練等で取り扱う内容も、骨折の手当や止血法、体位の管理、毛布等を使った搬送法がほとんどです。 しかし、心停止ではない傷病者に遭遇した非医療従事者、特に、業務として傷病者対応を行う(対応しないことが許されない)立場にある警備員や交通機関関係者などからは、「何をしてよいのかわからなかった」という声をよく耳にします。上級救命講習などを受講した方でもこのようなことを仰る方は少なくありません。

これはなぜでしょうか?



傷病名ありきの教育では対応できるはずもない


ファーストエイドに関する講習やファーストエイドを取り扱う書籍の多くは、次のように手当の方法を取り上げています。


● 骨折している場合は・・・・を行う

● 脳卒中の場合は・・・・を行う

● 熱中症の場合は・・・・を行う


このように、最初に傷病名を掲げ、それに対する手当の手技を解説・練習する展開がほとんどなのです。


実際の傷病者は、「この人は○〇のため倒れています」と書いてあるわけではありませんので、いま傷病者の体に何が起きているのか、どこから手当すべきなのかを判断する必要があるのですが、その方法に触れた講習は少ないもの。


「出血している場合は、直接圧迫止血法で止血する」


このような傷病名ありきで、個々の傷病のみ取り上げるファーストエイド教育の弊害は想像以上に大きいのかもしれません。


床に倒れている傷病者を発見。頭から出血しているのを認めたので出血部位を探すなどしていたが、実は飲食中の窒息で倒れた傷病者であり、結果傷病者は亡くなった…という事案も現に起きています。 参考:大分県立南石垣支援学校における事故調査報告書(令和元年7月) https://www.pref.oita.jp/site/gakkokyoiku/minamiishigaki-houkokusyo.html



ファーストエイドの原則を踏まえて


救急蘇生法に指針においては、”ファーストエイド”の定義である「急な病気やけがをした人を助けるためにとる最初の行動」しか記載していませんが、日本版蘇生ガイドライン原書にはさらなる記述があります。


ファーストエイドプロバイダーとは、ファーストエイドの訓練を受け、次のことをすべき人と定義する。

・ファーストエイドの必要な事態を認識し、評価し、優先順位をつけること
・適切な能力を用いてファーストエイドを行うこと
・ファーストエイドの限界を理解し、必要に応じて次に委ねること

ファーストエイドの目的は、人の命を守り、苦痛を和らげ、それ以上の病気やけがの悪化を防ぎ、回復を促すことである。

このファーストエイドに関するこれらの定義は、病気とけがを認識する必要があること、適切な技能の基礎を身に付けることが求められること、ただちに必要な手当を行うのと並行して、必要であれば救急医療サービスや他の医療従事者にゆだねる必要があることを示している。



商業施設内の通路にうずくまっている30歳くらいの女性を発見した。

「大丈夫ですか?」と呼びかけると、すごく辛そうに「はい…」と返答した。

倒れたときにどこかにぶつけたのか、額から出血している。

呼吸をするのも何だかつらそうで、肩が上下するとともに、息を吸うたびゼーゼー音がしている。

顔は赤みを帯びており、すぐ近くの床には嘔吐したものがある。

傷病者は「トイレに行きたい…」と口にしている。


さあ、どうしますか?

誰がみてもこれは正常ではない、「ファーストエイドが必要な事態」でしょう。

床にうずくまっている、辛そうな返事、額からの出血、呼吸が苦しそう、ゼーゼー音、嘔吐している…さぁどうすべきでしょうか?

119番通報すべきか、もう少し様子をみるべきか、それともタクシーなどで病院へ行かせるべきか。トイレに行きたいと行っているので、行かせるべきか…。

ガイドラインでファーストエイドプロバイダーの育成等に触れているものの、このようなファーストエイドの実態に即したトレーニングを受けることができる場は国内にほとんどないのが実情です。


どれだけの人数に対しどんな具材をどれだけの量使うのかや、具材を切るなどして準備する部分もすべて省略し、煮たり痛めたりだけをひたすら練習する料理教室で学んだスキルが家庭での料理で役に立たないように、現在のファーストエイド教育も個々の「調理」しか練習させていないといえるでしょう。



「何もしない」だって必要


ファーストエイドを学んだ人が陥りがちなのが、傷病者に対し「とにかく何かしなくては!」という考えになること。

ファーストエイドの目的は「苦痛を和らげ、それ以上の病気やけがの悪化を防ぐ」ことなのですから、これを行った方が悪化を防ぐことができるのか、それとも何もしない方が悪化を防ぐことができるのかを都度判断する必要があります。


例えば、作業現場での事故により骨折が疑われる傷病者が発生した場合、三角巾での固定をすぐに行うべきなのでしょうか。

足や腕を動かすことで苦痛を与えることになるかもしれませんし、かえって損傷を大きくしてしまう場合も考えられます。

大地震ですぐに救急隊等が来ない状況の中で、自ら医療機関に搬送する場合ならまだしも、市街地での負傷で数分後には救急隊に引き渡すことができるのであれば、「安静にさせる」「励ます」「救急隊が必要な情報を集めておく」などが最良の救助となる場合も少なくありません。


実施率向上等を目指してとにかく簡略化・単純化された心肺蘇生に比べ、常に評価と判断が必要なファーストエイド。

ファーストエイド教育においては、個々の手技のトレーニングだけでなく、評価と判断のトレーニングがもっと必要です。

特に、学校教職員(特に養護教諭)や保育士、集客施設のスタッフや警備員、交通機関関係者などには、充実したファーストエイド教育の提供が望まれるところです。




人が生きるしくみと死ぬしくみをシンプルに考え、生命危機がないかを体系立てて評価する方法を、非医療従事者でも理解できるよう噛み砕いて取り上げるセミナー。 実技訓練よりディスカッション主体で、思考や判断認知をトレーニングします。 もともとは集客施設のスタッフや警備員など、業務として傷病者対応にあたる方向けに企画したものですが、応急手当普及員の方や、ファーストエイドをより学びたい方もどうぞ。 PEARSが気になるけど何だか難しそう!という看護師さんなども、傷病者評価の入門編として活用いただけるかもしれません。


もともと非医療従事者向けセミナーですから、聴診器や血圧計、パルスオキシメーター、モニターなどの機器は当然使用しません。 その分、身ひとつでどこまで判断できるか?を考えるきっかけになるかと思います。

機材が無いプレホスピタル領域での対応力向上のお役に立てれば幸いです。



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