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  • ブレイブハートNAGOYA

0030 蘇生ガイドラインだけ読んで満足してはいけない

救命法の指導者であれば、心肺蘇生法等の手技の根拠が蘇生ガイドラインにあることはご存知のとおりです。日本版の蘇生ガイドラインはJRC(日本蘇生協議会)がガイドラインを策定しているため、「JRCガイドライン」と呼ばれることや、改訂年を付して「JRC-G2020」といった表記をされることも少なくありません。


「心肺蘇生法の国際ガイドライン」と講習等で説明する指導者も見かけますがこれは誤り。

現在、蘇生ガイドラインは国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation :ILCOR・イルコア)の勧告を踏まえて各国で策定されるものですから、幹は同じでも細かな部分は各国の実情にあわせたアレンジがなされています。


例えば、反応がある傷病者の気道異物除去について、日本版ガイドライン準拠の講習では背部叩打法と腹部突き上げ法が指導されるのに対し、BLSプロバイダーコースをはじめとした米国版(AHA)ガイドライン準拠の講習では腹部突き上げ法と胸部突き上げ法が指導されているのはこのためです。


では、日本国内の講習だから日本版ガイドラインをしっかり把握すればOKかといえば…決してそうではありません。


 

蘇生ガイドライン=蘇生学的正しさの追求


蘇生ガイドラインで定められている手技等は、蘇生学的にみて最も良い方法を示したもの。成人に対する胸骨圧迫であれば、必要な血流を生むために「約5cm圧迫すること」と、身体の無用の損傷を防ぐために「圧迫は6cmを超えないこと」が謳われています。


ではこの基準をそのまま適用し、救命講習で「6cmを超えないように!」と指導したらどうなるでしょうか?

フィードバック装置もない状態で1cm分の深さを巧みにコントロールできる人なんていませんから恐る恐る圧迫することとなり、結果として有効な圧迫が得られなくなってしまいます。


蘇生学的にみれば正しいが、教育的視点等をふまえると適切ではない。このギャップをかんがみ、普及や教育等の実務的指針として日本救急医療財団から発表されているのが「救急蘇生法の指針」であり、蘇生ガイドライン改訂の後に同指針も改訂発表されます。

消防機関の救命講習などはこの「救急蘇生法の指針」に基づき構成していますから、蘇生ガイドラインが改訂されても救命講習の内容が改訂されるまでに一定の期間を要するのはこのためです。


なお、改訂された蘇生ガイドラインが発表されると、熱心な救命法指導員やAED販売事業者がその内容をまとめてWEB記事にしているのを見かけますが、中には「胸骨圧迫は6cmを超えてはいけません!」とガイドラインの内容をそのまま述べていることも。それを見た一般の方の誤解を生みかねません。

 

指導者のバイブル「救急蘇生法の指針」


市民用の同指針は救急医療財団のウェブサイトでも公開されていますが、指導者が読むべきは『救急蘇生法の指針 市民用・解説編』。


一次救命処置とファーストエイドの具体的手技のみならず、救命法の教育に関する課題やその対策(普及・教育のための方策=EIT)、指導上の指針、法と倫理に関する指針、救助者の心的負担に関すること、職種や立場に応じた要求、計110問に渡るQ&Aなども記載されており、日本国内で救命法の指導(修了証を発行する講習のみならず、職場での研修等を行う方を含む)にあたる方ならば、同書が示す最新の「正しさ」と「考慮すべきこと」をしっかり把握したうえで指導にあたるべきです。


1760円の出費と研鑽を惜しみ、自己流の解釈や古い知識のまま指導を続ける指導者による不利益を被るのは、受講者、そして傷病者なのですから。


 

AHAコースをそのまま日本で展開するなかれ


日本国内でも、特に医療従事者向けの救命法トレーニングではアメリカ心臓協会AHAのプログラムが多用されていますが、AHAコースは米国のガイドライン準拠のもの。これをそのまま日本国内で展開すれば、違法行為すら生じかねないものであることを、AHAインストラクターは強く認識しなければなりません。

AEDのパッドの適用年齢やその名称、薬剤使用に関する法的規制など、日米の違いは多分に存在しています。


▼参考記事:救急蘇生ガイドラインとAHAのコース
 https://www.qq-bh758.com/post/_0027 

アメリカ製のコースであるとはいえ、その受講者が活動するのは日本国内。その実情にあわせたアレンジがなされなければ、「実効性」や「現場転移」は得られません。


●AHAでは、インストラクターが各コースを受講者のニーズにあわせて調整することを許可している。 ●インストラクターとして最も受講者の役に立てるのは、特定の受講者のニーズに応えるよう調整できていることである。 (AHA BLSインストラクターマニュアルG2020 P7)

AHA自らがこう述べているのですから、日本国内を職域とする受講者を対象とするAHAインストラクターがJRCガイドラインや救急蘇生法の指針を理解しようとしないのは、その責務を果たしていない(AHAの意向に反している)といえるのではないでしょうか。


 

適切な資料等で最新の「正しさ」を把握する


講師の経験談や考え方をもとに内容を構成するビジネスノウハウのセミナーなどとは異なり、蘇生教育には科学的根拠に基づく「正しさ」がありますし、それはどんどん改訂されていきます。

上司や先輩がこう言っていたから…ではなく、最新のガイドラインや指針に基づく「正しさ」を自ら理解して根拠を持った指導にあたることは、指導者の責務といえますが、参照する資料等に誤りがあれば、結局誤ったことを教授してしまいます。


救急蘇生法の指針をまだ読んだことがないという方は、まずは同指針をしっかり読んでみてください。これまで講習内で教授していたことと、最新の「正しさ」とのギャップが見つかるかもしれません。

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