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0014 間違いだらけのAED Vol.1 - AED使用者の法的要件 -

最終更新: 7月4日

日本救急医療財団は、きょう7月1日を「AEDの日」として、AEDを中心とした救急蘇生の普及啓発を推進するとともに、命の大切さを再認識して頂く全国的な市民運動を呼びかけています。



平成16年(2004年)の7月1日、市民のAED使用に関する法的解釈がなされて市民によるAED使用の普及が始まり、翌年の愛・地球博(いわゆる愛知万博)の際には、会場内のAEDを使用して複数名の命が救われ、AEDが注目されるようになりました。

あれから15年以上が経ち、市民によるAED使用や心肺蘇生の実施数は年々増加し、その分救命率や社会復帰率も向上しましたが、AEDに関する誤解もまだまだ少なくありません。

そのような情勢を踏まえ、今回から複数回に渡り、AEDに関する誤解等を取り上げていきます。

ここでお断りしておきますが、この記事は、善意で救助を行う一般市民に高度な救命処置を要求するために記述しているのではありません

命に関するプロである医療従事者はもちろんのこと、職務上の責任において一般市民以上の救命処置を行うべきレスポンダー(警備、介護、保育、教職員など)が自己の立場や法的要件、活動上の留意点などを再確認し、質の高い救命処置を現場で提供頂くことにあります。



市民によるAED使用が「認められた」のか?

AEDによる電気ショックは、今も昔も医行為。

医師以外の者が”反復継続する意思”をもってそれを行えば(=業として行えば)、医師法に抵触することとなります。

市民によるAED使用が始まったのは、法改正があったからではなく、新たな法解釈がなされたに過ぎません。

一般市民が心停止の傷病者に遭遇するのは、一生に一度あるかないか。

「たまたま遭遇した心停止傷病者にAEDを使用しても、それは反復継続性が認められず、業務として行っているわけでもないので、医師法違反にはならないですよ」 ということを政府(厚生労働省)が示したわけです。

厚生労働省医政局長通知(PDF)
「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」

多くの一般市民にとってはどうでもいい部分ではありますが、市民によるAED使用は平成16年に「認められた」というよりは、「使用に関する違法性がないことを政府が示した」というもの。

医療従事者や業務対応者(及びその指導者や管理者)であれば、知識としては持っておきたい部分かもしれません。


AEDは「誰でも特別な資格なしで使用できる」のか?

業務ではなく、善意で救助を行う一般市民については、先述の法解釈で問題なくAEDを使用できるようになりました。

しかし当時ネックになったのが、業務としてAEDを使用した救命処置の実施が期待される職種をどうするか。

当時の政府文書では具体的な職種名称は挙げていませんが、消防機関等が記載する情報をみると、学校職員、福祉施設職員、スポーツ施設職員、その他の公衆の出入りがある施設の職員、警備員、保育士などがこれに該当するといわれています。

このような方々は、政府文書では「業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の対応をすることが期待、想定されている者」と表され、「一定頻度者」などと呼ばれることがありますが、この一定頻度者はAED使用に関し”反復継続する意思”が認められてしまうことから、医師法に抵触してしまうという状態が生じてしまいました。

質の高い救命処置の実施が期待される立場ほど違法性が生じる。何とも困った状態です。

そこで政府が打ち出したのが、次の条件。

逃げ道とでもいいますか、「これを満たせば一定頻度者の方々のAED使用に違法性は生じません」と示したものです。

1.医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが困難であること
 
2.使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること
(注:意識、呼吸は、当時の蘇生ガイドラインの表記)
 
3.使用者が、AED使用に必要な講習を受けていること
 
4.使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていること
(注:現在の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)

一定頻度者の場合、上記3にある講習を受講していなければ、厳密にいえば違法性が生じてしまうのです。

一定頻度者に該当する職種の皆様、この要件を満たしたうえでAED設置施設等で勤務していらっしゃいますか?

なお、看護師が業務でAEDを使用する場合であっても、一般市民と同じように何の制約もなく使用できるというものではありません。普段あまり気にされていない部分かもしれませんが、一度法解釈などを詳しく考えてみてはいかがでしょうか。

一般市民がオールフリーなんだから、看護師でも同じ!…というものではないのです。

一定頻度者向けのAED使用に関する講習とは?

これも先述の厚生労働省医局長通知に記載されているのですが、簡単にいえば、CPRやAEDのトレーニングのほか、筆記及び実技の効果測定が含まれている講習のことをいいます。

消防の講習でいえば「普通救命講習II」や「上級救命講習」がこれにあたり、アメリカ心臓協会AHAの講習でいえば「ハートセイバーCPR AEDコース」(ただし、試験を省略していないもの)がこれにあたり、救命入門コースや普通救命講習Iではこの要件を満たさないことには注意が必要です。


いまのところこの講習受講有無を厳密に確認・調査等されることはありませんが、AED使用に関する違法性阻却のための要件として政府が示した見解に係るものですから、一定の効力を発します。


例えば、ショッピングモールでの心停止事案に関し、その施設での傷病者対応を含む保安業務を民事上の契約により受託した警備会社の社員(警備員)が、AEDがあるにも関わらず使用できなかったであるとか、AEDを使用したもののパッドの貼付位置の不適により電気ショックが本来効果で行われず、結果として傷病者が死亡したようなケースにおいて、傷病者の遺族が訴訟を起こした場合、一定頻度者に係る講習受講の有無が争点のひとつとなる可能性はゼロではありません。


政府が示した違法性阻却の要件を満たさずにAEDを使用し、そして誤った使用をしている。被告側が不利になることが予想されます。

いまのところ、まったく同じ争点での訴訟は発生していないと思われますが、業務に係る訴訟リスクを考えれば、無視できない要素ではあるかと思います。

正しい知識をもって正しく使用したい!

今回はAED使用に係る法的要件について取り上げました。

心室細動による心停止傷病者の救命に不可欠なAEDではありますが、直流1500V(電車の架線電圧と同程度)の電圧、20~30A程度の電流を、一瞬とはいえ人の体に流す行為をするわけですから、特に責任ある立場(医療従事者や、業務として傷病者対応を行う方)は、AEDに関する正しい知識を持ったうえで、傷病者発生に備えたいものです。

(Vol.2へ続く)

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