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  • 執筆者の写真ブレイブハートNAGOYA

0017 間違いだらけのAED Vol.4 – AEDは本当に救命のために設置されているのだろうか -

一般市民によるAED普及が始まり、15年以上が経過し、現在では全国で60万台程度が設置されていると考えられています。


市民がAEDを使用して除細動を行った件数も年々増加しており、心臓に原因がある心停止により倒れた瞬間を周りの市民が目撃した例(=AEDの電気ショックが有効な心室細動の可能性が高く、救命の可能性も高い心停止)では、約5%のケースで市民による除細動が行われたと報告されています。



この表は総務省消防庁の発表をもとに作成したものですが、「除細動実施」の数値はあくまで、ショックが必要であるとAEDが判断し、実際に電気ショックが行われた件数。

「除細動未実施」の件数には、AEDを使用したが、ショックは不要とAEDが判断したケースも含まれていることには注意が必要です。

AED普及をねらったセミナーや報道などで「AEDは5%のケースでしか使われていない!」と論じられることも少なくありませんが、「使用率」となるともう少し数値は大きくなるかと思われます。

とはいえ、AEDが設置されている施設で心停止傷病者が発生しても、救急隊到着までAEDが使用されていないケースも現にあるわけですから、AED使用率をもっと向上させる取り組みが必要であることには変わりありません。


 

本気で救命を考えて設置されたAEDはどれだけあるのか

AEDは心臓のけいれんを取り除き、異常な動きをしている心臓を止めることが目的であり、自己心拍の再開や脳のダメージ防止には胸骨圧迫が欠かせないということは、Vol.2でお話ししたとおりです。


では、AEDを設置した施設の関係者が、AEDの使用を含む心肺蘇生のトレーニングを受けるとともに、119番通報の手順等を明確に規定しているような施設はどれくらいあるのでしょうか。

店舗や企業などがAEDを設置した理由は、

本社から設置するよう指示がきて、機械も送られてきた

商店街組合が一括購入し、各商店街に配布した

地元有力者や関係者等から寄贈された

公共工事入札に関し、工事現場にAEDを設置すると点数が高くなる

業務仕様書にAED設置が義務になっていたので仕方なく

商業施設にはだいたい設置されているので、うちもとりあえず… 警備会社の警備プランにいっしょに入っていた

設置して地域貢献等をアピールするために設置

というものが決して少なくありませんし、「5年間で1回も使わなかったのだから解約しよう」という組織上層部の決定により、撤去されたAEDもあるくらいです。

そのような組織でどのような体制がとられているかは想像にたやすいものでしょう。


 

適正な管理がなされていないケースも

我が国では、AEDを設置するにあたって許可を受けたりや届出を行ったりする必要はなく、自由に設置することが可能です。そのため、販売・設置台数は世界トップクラスといわれていますが、現在の正確な設置台数や、現在稼働しているAEDは把握できていません。

現在ではAEDを設置する際に、設置状況を救急医療財団に登録する書面が同封されているものの、この書面を送るか否かは設置者次第。やはり正確な台数等はわかりません。

また、メーカーは購入者・設置者に保守管理(パッド交換等)の通知を都度するものの、それが確実に履行されたかまでは追跡しきれません。

現に、パッドやバッテリーが交換されずに放置されているAEDが公の場所にも存在しています。


公的施設に設置されているAED。

撮影は2020年3月末ですが、ラベルに「調製 平成17年3月31日」とあるので、設置から既に15年が経過していることがわかります。

パッドの封入方法のせいで、異常を示すインジケーターもうまく見えない状態であるとともに、ずっと同じ状態ですから、日常点検も特に行われていないと思われます。

道の駅に設置されているAED。ボックスの記載をみると寄贈品のようです。

消耗品交換タグをみると、撮影時点で3か月ほどパッドの交換期限を超えています。


商業施設内に設置されていたAED。

これを撮影したのは2015年8月ですが、消耗品交換タグには「バッテリ装着日 2009年7月」とあるので、少なくともバッテリーは使用寿命を1年超過していることがわかります。

インジケーターが「使用不可」のまま放置されていました。


欧米企業のようにセキュリティ/リスクマネジメント部門が独立して存在しているわけでもなく、総務部門の担当者がさまざまな業務の中でAEDも所管する日本企業では、AEDの適正管理や体制づくりまで手が回っていないことがほとんど。

大きな企業の場合は担当者が2~3年で異動となり、設置当時の説明等も引き継がれないケースが散見され、AEDの管理不備に繋がっています。

これは民間企業だけでなく、官公庁でも同じこと。 例えば宮崎県の監査報告をみると、AED点検を行っていなかった庁舎管理者は全体の約2割あり、その理由の4割は「日常点検の必要性を認識していなかった」というものです。




 

AEDの適正な管理をどう成し得るか

AEDは「設置すること」が目的になっているケースも多く、価格の安さだけがみられ、販売店のアフターケアを重要視して機種等の選定をする設置者は希少かと思われます。

中には現地を訪問してバッテリー交換等も行う販売店もあるようですが、なかなかそこまでできないのが実情。

販売店が設置者に対しまともな説明等をしていないのは論外として、本来は適正な管理を実施する責任は設置者にあるもの。設置者がAEDに関する正しい認識を持つことが望まれます。

ではその正しい認識はどうやってつくるのか。

AEDを設置する施設関係者が自ら深い知識を得ようと行動することは稀でしょうから、ここはやはり販売店の力が重要なものとなります。

しかし、販売店が適正な説明や販売等をしているのかというと…。

ここは次回考えていきます。

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