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0007 「備える」ということ

最終更新: 1月8日

朝天気予報をみて、「今日の降水確率は80%です」と言われたら、多くの方は傘を持って出かけるでしょう。 でも、同じ80%の確率でも、「南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率」にしっかり反応して対策を行う人はまだまだ少ないもの。 雨が降るのはすぐ目の前にある出来事。今の天気予報の精度から考えほぼ間違いない。

地震は数秒後に起きるかもしれない。

でも「30年以内」という言葉を見た人は、「きっとまだ大丈夫」と楽観視する。 自分の身に危険が及ぶとは考えたくない機構は人間に備わったものであり、自然な感情ではあります。しかし、私たちには、様々なリスクを考え、備えなければならないことがたくさんあります。 5年間使用しなかったAED ※写真はイメージです

一般市民によるAED使用の普及(医療機関等以外へのAED設置)が始まってから15年程経過し、それにより多くの命が救われました。 出荷されたAEDは平成28年時点で68万台にも及んでおり、その多くは保証期間や耐用年数内に1度も実使用されることなく更新されます。 20~30万円程度する機械が一度も使われることなく廃棄をむかえる。皆さんはこれをバリューととるでしょうか?それともコストととるでしょうか?

「5年間一度も使う機会がなかったのだから、更新の必要はない。撤去だ。」 会議でそのような議論がなされ、撤去されてしまったAEDもあります。

使われないものは無駄。その考えはわからなくもありません。 では、その決議をした方々は、「〇年間利用する機会がなかったから無駄だ」と、自身の自動車の保険を解約するのでしょうか…。 おそらくそれはないのでしょう。 保険が効かないことで厄災が降りかかるのは、他人ではなく「自分自身」なのですから。 「これがあるから大丈夫」と安心していないか 「セキュリティシアター」(Security Theater)という言葉をご存知でしょうか。 セキュリティに関する対策をしているようで、実はその効果はない…という状態を指す言葉です。(このセキュリティとは、日本で考える「防犯」よりもっと広い意味で、安全対策やリスク対策全般のことを指すとお考えください) 学校での殺傷事件があったからと、とりあえず刺股を職員室に設置した。 警備会社に依頼して、登下校時に1名警備員を配置した。 これで「対策はしたぞ」と安心してしまう人が少なくありませんが、殺傷事件を防ぐ効果はほぼないといえるでしょう。これがセキュリティシアターです。 救命分野でいえば、AEDを設置しただけで関係者のBLSトレーニングは何もしていない状態などがこれにあたるでしょう。 また、少年野球グループなどでは、「〇〇君のお母さんは看護師さんだから安心よね」といった言葉をしばしば耳にしますが、はたしてその方は病院外で救急活動を行うスキルを持っているのでしょうか。必要な資機材は準備されているのでしょうか。 旅行先での「いざ」に備えるツアーナースという仕事 看護師の活動領域は病院内だけではありません。 病院外で活躍する看護師の中には、修学旅行や団体旅行などに同行して、健康管理や傷病の対応等を行う「ツアーナース」と呼ばれる人たちもいます。


ブレイブハートNAGOYA(の中の人)も昨年、横浜で開催されたツアーナース向け講習のお手伝いをさせて頂きましたが、病院内のように充実した機材もなく、専門スキルを有した自分ひとりしかおらず、様々な判断や処置を求められる、この職の奥深さを改めて認識しました。 発生する事象は日常的な傷病にとどまらず、アナフィラキシーショックといった緊急度の高いものもあるほか、ツアーの内容によっては高リスク受傷機転に該当する事故も発生します。そして時には心停止も。 BLSはもちろんのこと、ファーストエイド領域のスキルが多分に求められますが、病院外が活動領域とはいえ医療従事者たる看護師ですから、心停止傷病者発生時には人工呼吸を省略しないフルサイズの心肺蘇生が要求されます。 以前の記事で記載しましたが、日本の心肺蘇生ガイドラインは医療従事者が行う心肺蘇生において、人工呼吸が省略できるケースを定めていません。そのため、人工呼吸を行うスキルはもちろんのこと、それを成し得るデバイス(ポケットマスク等)を携行することが必要となります。(医療従事者が人工呼吸を省略したことが争点となった裁判例も以前紹介しました) 「いざ」は頻繁に起きるわけではないが… 添乗の中で緊急度の高い事案に遭遇する機会は頻繁ではないのでしょうが、いつ起きるかわからない「いざ」に備えるために配置されている職種。その「いざ」に即応できるための相応の「備え」が必要です。 そのような事案に一度も遭遇することなく過ごすことができるツアーナースもいらっしゃるのでしょうが、看護師という専門職である以上、有事即応できなければ責任問題に。 子どもたちといっしょに旅行に行けるキラキラ楽しい職種…ではないはずです。

「いざ」に即応できる人がいかにいるかで、その「いざ」に見舞われた人、そしてその家族の人生が大きく変わります。 子どもが楽しみにしていた修学旅行。思い出の数日間…になるはずが、本人はこの世でもう思い出を作ることができなくなってしまった。 その家族は、家から出かける際に子どもと交わした言葉が、最後の会話になってしまった。 思い出ではない忌まわしい記憶と、壮絶なその後の人生の始まりとなってしまった。

そんなことが日本でもたくさん起きているのです。 「未来は変えていける。未来しか変えることはできない。」 傷病者が亡くなってから後悔しても、その人は帰ってきません。 そのような方を次に出さないために、私たちに何ができるでしょうか。


学校宿泊行事中に子どもを亡くした遺族と、命を守る立場のツアーナースが、本音で語り、伝えるセミナーが3月に横浜で開催されます。 おそらく前例のない「ツアーナースと遺族」というコラボならではの内容が数々登場することでしょう。

現役ツアーナースと、遺族が語る事例を交えて、宿泊行事の安全について共に考える場を提供します。ツアーナースとは?から始まり、「現状、課題、展望」について提言していきます。 受講者の職種等に制限はないので、ここまでの話に興味を持たれた方は、是非足を運んでみてください。 詳細やお申込みは、主催者である「Cross × Three」(クロスバイスリー)のウェブサイトからどうぞ。 Cross × Three ウェブサイト https://a-a-cross.amebaownd.com/

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